カサブランカに愛を 殺人者は時空を超えて

 シンキングラビットのアドベンチャーゲームです。

 1945年6月。シカゴの新聞社デイリー・カサブランカの女性記者、ジェリー・ランドルフのもとへ、行方不明になったハイスクール時代からの親友、メイ・エルガーから日記が送られてくる。
 日記には、科学者である父親の研究のこと、その研究を狙った軍部から脅迫されていること。さらに、いつか自分に魔の手が及ぶかもしれないということが書かれていた。
 同僚のロイ・スティーブンスとともに彼女の家へ向かったジェリーは、そこでメイの父、エルガー博士が何者かによって刺殺されているのを発見する。
 博士の研究によって造られた謎の機械。研究室に向かっているだけで、出ていった形跡のない足跡。そして、絶命した博士のあまりにもおだやかな顔。
 はたして殺人者を追いかけるジェリーたちを待ちうける運命とは……。

 第二次世界大戦を背景にしたSF的なストーリーに、モノクロームの色調で描かれたノスタルジックな風景。『カサブランカに愛を』は、当時大人も十分に楽しめる作品として好評を博しました。
 映画『カサブランカ』を意識した広告イラスト(タイトルバックにも使用)が、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

 奇妙な殺人事件に端を発するミステリアスな導入部分から、SFの世界に迷いこんでの冒険と、真実を求める中で明かされる愛の物語。
 それほど長いお話ではありませんが、それらがうまく描かれている作品だと思います。
 もちろんシンキングラビットらしいユーモアも忘れられておらず、ほどよいスパイスとなっています。
 コマンド入力型でありながら難易度があまり高くなく、それほど詰まるようなところも無いと思います。

 94年にシンキングラビット(3DO)、96年にリバーヒルソフト(Windows95)から発売されたリメイク版『時を超えた手紙』では、コマンド選択が導入され、メッセージが追加&音声化されるなど、今風にアレンジされた内容となっています。
 ただ、マップが広がり、ゲームとしてのボリュームも増えたのですが、謎解き部分はオリジナル版と大差ないので煩雑になった感は拭えません。
 ウリの音声も、主役の二人以外の声優が兼役で複数のキャラクターを演じていたりなど、同時期に発売されたリバーヒルのリメイク作品に比べ、少々物足りなさを感じました。
 しかしキャラクターやマップが増えた分、ストーリー的には厚みを増し、本作のテーマであるSF的趣向をうまく伏線に使うなど、楽しみ甲斐のある作品に仕上がっています。未プレイの方は、こちらをプレイしてみてはいかがでしょう(2000年9月29日にサイバーフロントから「PCゲームBESTシリーズ」として2480円で発売されているようです)。

 本作のファンはご存知でしょうが、『カサブランカに愛を』はジャック・フィニイの作品世界をイメージして作られています。フィニイの小説を読めば、本作の魅力もきっと倍増すると思います。
 私もお薦め。『ゲイルズバーグの春を愛す』(ハヤカワ文庫FT)。

英字入力用単語集

おまけ MSX2版のEND後のメッセージ(ネタバレです……他機種版をプレイした方へ)

攻略テキストです。プレイできる環境がいまだにある方は、よろしければどうぞ。

88版。中身はすべて同じものです。
確認していませんが、他機種版でも応用可能だと思います。


casablanca.txt   casablanca.zip

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